私が(勝手に)師と仰ぐ日本在住の英語学者であるT.D.ミントン氏の書籍日本人の英語表現は、日本人が勘違いしている文法事項に鋭いメスを入れている名著です。
扱っている内容的にはちょっと高度な話も多いですが、すごく参考になります。
その中で、山手線の車内アナウンスにおける3つの重大な間違いを指摘しています。
実際に流れるアナウンスは以下です。
“This is the Yamanote Line train bound for Ueno and Ikebukuro.
The next station is Kanda.
The doors on the left side will open.
Please change here for the Chuo Line and the Ginza Subway Line.”
ミントン氏はこの中に3つの日本人の典型的な間違いがあるといいます。
冠詞ひとつで意味が変わる
まず”the Yamanote Line train”の部分。
山手線自体は固有名詞なので定冠詞”the”をつけて”the Yamanote Line”でもいいですが、”train”が付くと話は別。
ここでの”the”は”train”という名詞を修飾しているので、冠詞はあくまでも”train”に合わせて不定冠詞の”a”にするのが正解。
“the Yamanote Line train”の場合の”Yamanote Line”は、あくまでも”train”に対しての修飾語なので、それに合わせて”the”にする必要はないということ。
“the Yamanote Line train”と言ってしまうと、その電車が「唯一の」山手線の電車になってしまいますよね。
山手線は1日何百本も走っていますよね(笑)
ちなみに、同様の間違いが新幹線でも……
“This is the Asahi super express bound for Tokyo.”
ここも同じロジックで、”a Asahi super express”ですよね。
んー、冠詞の問題は私たち日本人にはやはり難しいです!
“Please”を付ければ丁寧というわけではない
次に、2つ目の間違い。
“Please change here for”の部分がおかしいと指摘します。
私は何の違和感も感じませんでしたが、いわく、”Change here for”という言い方で十分とのこと。
日本人は、”Please”をつければ何でも丁寧になるという勘違いがとても多いと指摘します。
この”Change here for”は、形式上は命令形だが、意味は命令ではなく、単に「聞き手に役立つ情報の提供」という、英語ではよくある形らしいのです。
確かに、フォーマルな会議やプレゼンなどでも、聴衆の注意を引きたいときに”Look”や”Listen”などと言いますよね。
しかし、これにpleaseをつけてしまうと、もはや情報提供ではなくただの命令文になってしまう。
つまり、結果として「どなた様もこちらでお乗換え下さい」という意味になってしまうんです!(笑)
“please”さえなければ、神田で乗り換える客への情報提供として適切だったんですね。
これは、正にネイティブならではの指摘ですよね。
“and”は気軽に使うなかれ
最後3つ目は……
“the Chuo Line and the Ginza Subway Line”
ここでの”and”は完全に不適切。
“and”で結んでしまうと、「中央線と銀座線の両方に乗り換える」という、何とも奇妙な意味になってしまいます。
こう指摘されるまで、何の疑問も感じなかった自分が恥ずかしい……
いかがでしたか?
山手線に乗ったらこの“3つの間違い”を思い出してください(笑)